木更津簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
本件請求を棄却する。
理由
右請求人は再審の請求を申立て、その理由の要旨は、請求人は昭和二五年八月二二日木更津簡易裁判所において窃盗罪により懲役一年に処する旨の判決を受け、右裁判は同年九月六日確定し、千葉刑務所において右刑の執行を受け、昭和二六年七月一九日仮出獄により同刑務所から釈放された。然しながら請求人は昭和七年九月一一日東京都豊島区駒込六丁目七七三番地において今井武雄の長男として出生したのであるから、右裁判当時は一七歳一一ケ月の少年であり少年法の適用を受けて、軽い処罰で済み、前科ともならず、就職にも有利であつたのに、裁判所の過誤によりこれらの利益を奪われたが、幸に法律を知ることができ、再審を知つたので刑事訴訟法第四三五条第六号により本請求に及ぶ、というのである。
そこで調査するに、千葉地方検察庁木更津支部検察事務官三浦武雄作成の判決書謄本によれば、請求人が昭和二五年八月二二日木更津簡易裁判所において窃盗罪により懲役一年に処する等の判決を受けたこと、千葉市長宮内三朗作成の戸籍謄本によれば、請求人は昭和七年九月一一日東京都北豊島郡巣鴨町上駒込七七三番地において父武雄、母シゲ間の長男として出生したことがそれぞれ認められるから、請求人は右裁判当時は一七歳一一ケ月の少年であり、従つて請求人に対して公訴を提起するに当つては家庭裁判所の調査審判を経由し、その送致をまたねばならなかつたものというべきである。そして前記判決が被告人(請求人)の年令を当二〇年九ケ月(昭和四年九月一一日生)と表示しているところから、少年法所定の手続が履践されていなかつたものと推認するに難くない。そうとすれば前記裁判所は請求人の前記事件につき刑事訴訟法第三三八条第四号により公訴棄却の判決をなすべきであつたのであるから、その訴訟手続違反はこれを認めざるを得ない。然しながら再審は事実誤認の疑いある確定判決を新たに発見された証拠または事実によつて覆えし、更に有利な判決を得させる制度であるから、凡そ判決の法令違反はそれが実体法上のものであれ、訴訟手続上のものであれ、非常上告の事由とはなり得ても、再審事由とはならず、結局本請求は理由がないから同法第四四六条第一項によりこれを棄却する。
なお請求人は、簡易裁判所は少年の刑事事件につき裁判権がないとも主張しているが、簡易裁判所は少年の刑事々件でも、窃盗罪その他裁判所法第三三条所定の犯罪については科刑上一定の制限の下に裁判権を有するのであるから右主張も理由がない。よつて主文のとおり決定する。